第58章 賢い女

一時間後、車は天龍グループの敷地へ滑り込んだ。

工藤達央は降りるなり、まっすぐ執務室へ向かう。

咲子が天龍グループに来るのはこれが初めてだった。普通なら目を輝かせてあちこち見回すところだろう。

だが咲子は驚くほど落ち着いていた。周囲のすべてが自分とは無関係だと言わんばかりに、ソファへ腰を下ろしたまま微動だにしない。木彫りの人形みたいに。

「コンコン……」

執務室の外でノックが鳴った。

「入れ」

工藤達央が短く告げる。

扉が開き、小山茜が入ってきた。

「社長、江北商会の三浦会長から誕生日パーティーの招待状が届いていましたが、ご覧になりましたか」

「ああ、受け取った」

工藤...

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